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人付き合いを身につけようとするが怖い少年 [人付き合い]

人付き合いを身につけようとするが怖い少年リッキーは、じっとしていた。
彼はじっとセラピストを見つめている。
ほんのわずかだが、涙が浮かんだようだ。

彼を助けるためには、これくらいのトリックにひっかかってはいけない。

おだやかに、しかしはっきりとセラピストは言って聞かせた。
「僕には、それは効かないよ、リッキー。大人をそうやって見つめると、キミの言いなりになると思ってるみたいだけど、それはよくないね。
それに、僕にはダメだ。
キミをこのまま帰してあげるつもりはない。
キミには僕の助けが必要だ。
他のやり方を考えなくては」

リッキーが、面子まるつぶれになるのは嫌だろうと思って、ここは深追いしないことにした。
「いま、水を持ってくるから、それからゆっくり話そうね」

すぐに部屋にもどると、彼は椅子に腰かけてうなだれていた。
もう一度、セラピストは彼に立ち向かうことにしたが、ちょっと方向を変えた。

今度は、セラピストはニッコリ笑いかけ、はずむように、「いやー、キミ、ほんとうに上手、感心しちゃうよ。
ダン先生も、すんでのところでひっかかるところだったよ。
あの調子で、ママをやっつけちゃうんだろ?」
床をじっと見つめたまま、彼は頭を縦に振った。
「おもしろいだろ?キミときたら、大人をおかしくなる寸前まで追い詰めちゃうんだもの」―彼の秘密を言わせようと、かまをかけてみた。

ふたたび、彼はセラピストを、相手の心を動かそうとする例のまなざしで、じっと見つめた。
セラピストは熱心につづけて、「ね、そうなんだろ?」彼は溜息をついて、「僕が何だって?」と言う。

「そうやって、見つめてパパやママをおかしくしちゃうんだろ?」
「おかしいって何のこと?」
「もう、いい加減にして。僕が何を言いたいかわかっているくせに。イタズラを見つかった後、パパやママが叱ろうとすると、その悪魔のまなざしでじっと見つめるんだ。
すると、どうしたことか、パパやママは何も言うことができなくなってしまう!だから、パパやママはおかしくなりそうになるんだよ。そうだろ?」

リッキーはあきらかに、私を持て余し気味だった。
いつもの調子では、なぜか、この私には効き目がない。
そこで、待ち伏せを失敗した男の子がみんなやるように、もうひとつ、絶対確実というやり方で攻めてきた。
それは、本当のことを言ってしまうことだ。

「まったくその通りだよ」
「それがキミの自慢なんだろ?」
「うん、まあね」
「でも、いつもいい気持ちではないだろ?」「それ、どういうこと?」
「いつまでも、そんなバカなことばかりやっている自分が怖くない?」「うん」
「時には、両親に償いをしたいと思わない?」「うん」
「でも、そうは言えないのだろ?」

そこで、人付き合いの怖い彼は急に元気を取り戻した。
「それ、ちがうよ」

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そうやってしばらく、前向きに話をした後で、「じゃ、誰がそれをしなくてはいけないと思うの?」と聞いてみた。

二人は、お互いの顔を見た。
セラピストは、残念そうな表情で、「先生がやらなくてはいけないみたいだね」と言った。
彼はすぐに諦めなかった。
「わざわざしてくれなくたって」
「キミがもっと責任の取れる大人になるのを助けようと思うから、先生はそうするんだ」

彼に悪魔がもどってきたらしく、ずっと落着きを取り戻した。
そこで、あの小悪魔の表情に返って、「好きにならなくても、やりさえすればいいんだね」と、たたみかけてきた。

リッキーに責任感を持たせようというのは、とても無理のようだ。
あとで、両親と話しながら、遅かれ早かれ、リッキーも、「あのダン先生、殺されないのが不思議だよ」という、フラストレーションでいっぱいになったほかの問題児たちの発言に、「大賛成!」と叫ぶだろうな、と考えた。
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