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自己犠牲に生きる母もまた、子どもをピーターパンシンドロームへと導く [人付き合い]

ジム・トルセンの父親は、けっして父親と呼べるような人物でなかった。
死ぬまで得体の知れない人物だった。
怖かったけれど、尊敬はできなかった。
この複雑な気持ちからジムは反抗し、あやうく刑務所行きになりかけたことも何回かあった。

農場で育ったジムは、物心つく頃から働いた。
それが彼にとって諸刃の剣となった。
よく働くばかりで、遊ぶことをまるで知らない青年になってしまったのだ。
労働のために、非行少年にならないですんだし、立派な現場監督になることができた、とジム自身は思っている。
それだけに彼は、青年になる頃にはすでに、仕事にウンウン言っていないと心が休まらない、ワーカホリックになっていた。
そうすることではじめて、父親から認めてもらえたからだ。
そしてジムは、「人生をよくするには、お世辞ぬきの態度で問題解決をはかるほかない」と考えるような大人の生活へと入っていった。
しかも人付き合いが怖いジムは、自分は息子を可愛がる素敵な父親になりたい、という激しい望みをいだいていた。

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妻のエドナは、溺愛型の父親と心の乱れた母親の間に生まれた。
エドナは、父親が母親を離婚しなかったのは、同情からだと思っている。
父親自身、大酒飲みであった。
母親は四回もノイローゼにかかり、その原因はすべて夫にあると夫をなじっていた。
エドナの家庭は暗く、険悪だった。
母親はたえず父親を非難し、近所の奥さんとの浮気を見つけては騒ぎ立てた。
父親も怒鳴りかえし、暴力をふるったこともある。
エドナは父親を許したが、エドナの母親は父親を許そうとしなかった。


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人付き合いを身につけようとするが怖い少年 [人付き合い]

人付き合いを身につけようとするが怖い少年リッキーは、じっとしていた。
彼はじっとセラピストを見つめている。
ほんのわずかだが、涙が浮かんだようだ。

彼を助けるためには、これくらいのトリックにひっかかってはいけない。

おだやかに、しかしはっきりとセラピストは言って聞かせた。
「僕には、それは効かないよ、リッキー。大人をそうやって見つめると、キミの言いなりになると思ってるみたいだけど、それはよくないね。
それに、僕にはダメだ。
キミをこのまま帰してあげるつもりはない。
キミには僕の助けが必要だ。
他のやり方を考えなくては」

リッキーが、面子まるつぶれになるのは嫌だろうと思って、ここは深追いしないことにした。
「いま、水を持ってくるから、それからゆっくり話そうね」

すぐに部屋にもどると、彼は椅子に腰かけてうなだれていた。
もう一度、セラピストは彼に立ち向かうことにしたが、ちょっと方向を変えた。

今度は、セラピストはニッコリ笑いかけ、はずむように、「いやー、キミ、ほんとうに上手、感心しちゃうよ。
ダン先生も、すんでのところでひっかかるところだったよ。
あの調子で、ママをやっつけちゃうんだろ?」
床をじっと見つめたまま、彼は頭を縦に振った。
「おもしろいだろ?キミときたら、大人をおかしくなる寸前まで追い詰めちゃうんだもの」―彼の秘密を言わせようと、かまをかけてみた。

ふたたび、彼はセラピストを、相手の心を動かそうとする例のまなざしで、じっと見つめた。
セラピストは熱心につづけて、「ね、そうなんだろ?」彼は溜息をついて、「僕が何だって?」と言う。

「そうやって、見つめてパパやママをおかしくしちゃうんだろ?」
「おかしいって何のこと?」
「もう、いい加減にして。僕が何を言いたいかわかっているくせに。イタズラを見つかった後、パパやママが叱ろうとすると、その悪魔のまなざしでじっと見つめるんだ。
すると、どうしたことか、パパやママは何も言うことができなくなってしまう!だから、パパやママはおかしくなりそうになるんだよ。そうだろ?」

リッキーはあきらかに、私を持て余し気味だった。
いつもの調子では、なぜか、この私には効き目がない。
そこで、待ち伏せを失敗した男の子がみんなやるように、もうひとつ、絶対確実というやり方で攻めてきた。
それは、本当のことを言ってしまうことだ。

「まったくその通りだよ」
「それがキミの自慢なんだろ?」
「うん、まあね」
「でも、いつもいい気持ちではないだろ?」「それ、どういうこと?」
「いつまでも、そんなバカなことばかりやっている自分が怖くない?」「うん」
「時には、両親に償いをしたいと思わない?」「うん」
「でも、そうは言えないのだろ?」

そこで、人付き合いの怖い彼は急に元気を取り戻した。
「それ、ちがうよ」

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そうやってしばらく、前向きに話をした後で、「じゃ、誰がそれをしなくてはいけないと思うの?」と聞いてみた。

二人は、お互いの顔を見た。
セラピストは、残念そうな表情で、「先生がやらなくてはいけないみたいだね」と言った。
彼はすぐに諦めなかった。
「わざわざしてくれなくたって」
「キミがもっと責任の取れる大人になるのを助けようと思うから、先生はそうするんだ」

彼に悪魔がもどってきたらしく、ずっと落着きを取り戻した。
そこで、あの小悪魔の表情に返って、「好きにならなくても、やりさえすればいいんだね」と、たたみかけてきた。

リッキーに責任感を持たせようというのは、とても無理のようだ。
あとで、両親と話しながら、遅かれ早かれ、リッキーも、「あのダン先生、殺されないのが不思議だよ」という、フラストレーションでいっぱいになったほかの問題児たちの発言に、「大賛成!」と叫ぶだろうな、と考えた。
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